日々の忙しさにふと立ち止まりたくなったとき、本棚の奥から取り出して読みたくなる作品『小さなお茶会』。猫の夫婦、「もっぷ」と「ぷりん」の少し不思議で優しい日常を紹介します。
「小さなお茶会」紹介
1978年から「花とゆめ」(白泉社)で9年間連載していた人気作『小さなお茶会』。猫十字社氏による作品です。連載開始から47年を迎え宝島社から愛蔵版全3巻が刊行されました。当時の読者だった親から紹介され二世代ファンになったという人もいます。「ぷりん」と「もっぷ」という猫の夫婦が紡ぐ物語。
猫夫婦の丁寧な暮らし
日常のお茶を淹れる、料理を作る散歩をする。その毎日何気なく過ごしている日常が一つ一つ丁寧に描かれています。毎日を慈しみ過ごす二人の姿は現代の私たちが求めている暮らしのような気がします。一杯のコーヒーを淹れる、靴を揃えるなど、一つの動作に意識を向ける旬の食材で料理をする、季節の花を飾るなど自分にとっての丁寧を見つけるヒントになります。
言葉一つ一つが心に刺さる「小さなお茶会」
物語は擬人化された猫が住む世界ですが、なぜかとても人間臭く感じます。哲学的で不思議な世界です。そして主人公たちの言葉の一つ一つがとても美しく心に刺さります。
1つのお話を紹介します。「月の光のオルゴール」というお話。猫生(じんせい)の黄昏期をむかえた初老の紳士猫が、骨董品店で亡き母のオルゴールを見つけます。すぐに自分のものにしたいだけど、オルゴールを持っていることが苦しい聴くのが恐ろしい思っています。ちょうどその時、ショーウィンドウでこのオルゴールを熱心に見ていたもっぷに出合うという内容です。この物語の最後のもっぷのセリフは心に刺さる名言です。初老の紳士の最後のセリフも心に沁みるものがあります。
他にもちょっとした言葉や言い回し表現方法が素敵だと感じたものを紹介します。
1つ目は、お気に入りのもっぷとおそろいのカップを割ってしまったぷりんにモップが言った言葉です。「悲しいことがあったら何か楽しいこと考えよう」という言葉、とても前向きで優しい言葉だと思います。
2つ目は、雨の日の「めいっている」感じもぷりんのセリフを借りると、「十字路みたいにどっちにも行けそうだけどどっちに行ったいいのかわからない、ゼリーの中みたいに動けそうで動けない」という表現になります。言葉にしたくても当てはまる言葉が見つからず思ったままを表現しているところがいいです。そしてその表現をちゃんと理解しているもっぷはすごいです。
3つ目は、鍵の話です。「鍵はたいていものとことばとふたつの扉を開けるちからを持っています」というセリフがあります。その理由が「学生だった頃アパートの鍵をなくさないで扉が開けばベットがあってぐっすり眠れる だから「眠り」」といものです。鍵が言葉の鍵をなくさなければ何の鍵かがわかるという表現は確かになと思いました。
4つ目は、忙しいことも「時間をどっかにおっことしちゃった」と表現するそのユーモアのセンスが素晴らしいことです。さみしさを表現する絵がやさしいことです。こちらの気持ちまでやさしくなります。
5つ目はもっぷが詩をつくる話です。言葉をモノのように組み立てたりくずしたり詩をつくるときの言葉、例えば”狩る”イメージをそのまま”狩り”として表現したり鳥に言葉をのせたりしてしている表現が心情風景と現実の風景が重なっていて独特で好きです。
6つ目はダイエットをしている奥さんに「ぼくそのくらいが好きだな ぼくは好きだよ」と今の体型が太ってないことを言葉にして伝える旦那さんのやさしさが素敵です。
さいごに
心情風景が現実の風景を重なっている表現は独特で好きです。読み終えた後、いっぱいの紅茶を丁寧に入れたくなるそんな優しい気持ちになる作品です。

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