日向夏による『薬屋のひとりごと』の世界を違った角度から味わえる外伝マンガが登場しました。それが七緒一綺がコミカライズを担当した『小蘭回想録』です。本作は、後宮で働く少女・小蘭(シャオラン)の視点から描かれる物語です。主人公・猫猫(マオマオ)の観察者・噂話を話す相手として登場していた彼女の日常や内面が描かれています。明るく人懐っこいイメージの小蘭ですが、その印象の裏には不安や葛藤を抱えている姿が心を打ちます。本編『薬屋のひとりごと』では見えない後宮で生きる少女たちの日常が小蘭視点で描かれているため身近に感じられます。本編のファンはもちろん違う視点の『薬屋のひとりごと』を味わいたい人にはおすすめの作品です。小蘭ファンにはぜひ見ていただきたいです。そんな『小蘭回想録』を紹介します。
『小蘭回想録』基本情報
原作は日向夏氏、漫画は七緒一綺氏です。「薬屋のひとりごと」コミカライズスクウェア・エニックス版『薬屋のひとりごと』(原作日向夏 作画ねこクラゲ)で構成を担当しています。七緒一綺氏は、小蘭回想録では原作者の指名によりコミカライズ(作画担当)を担当しています。日向夏氏曰く「七緒さんは小蘭愛が強い。小蘭を任せるなら七緒さんしかいない!」という熱烈アピールをしたとコミックのあとがきに書かれていました。七緒氏自身も小蘭の外伝だけは私に描かせてください!と言い続けていたとコミックのカバー折り返しに収録されています。原作者も漫画家も小蘭(シャオラン)への思いがとても強いです。そんな強い思いで描かれた作品だからでしょうかただの脇役では終わらせない!という気持ちがひしひしと感じられます。派手な事件や大きな展開はありませんが後宮という閉ざされた世界で生きる少女の現実が丁寧に描かれた作品になっています。
「薬屋のひとりごと 外伝 小蘭回想録」はどんな内容
小蘭視点の本編には謎解きはほとんどありません。描かれているのは小蘭の日常や心情、日々の成長です。特に成長を感じたのが、セリフに漢字が出てきた場面です。本編の小蘭のセリフがずっと数字の漢字以外ひらがなで書かれていました。初めて“やく”の名前を漢字で知ったとき「ありがとう 野狗(ヤク)」と名前がひらがなから漢字へ変わっていました。文字を一つ覚えたのだと感じました。猫猫みたいな突出した能力は持たないからこそなのか、小蘭の心情はとても共感しやすいと思える内容です。
原作「薬屋のひとりごと」とは
「薬屋のひとりごと」は、後宮を舞台に、薬や毒の知識が豊富な猫猫(マオマオ)が事件や謎を解明していくミステリー要素ありの物語。宦官壬氏(ジンシ)やさまざまな人々との関りが魅力的な作品です。
日向夏さんによる作品で“小説家になろう”で連載が始まった作品です。現在ヒーロー文庫で販売されているほか2社でコミカライズされています。2023年10月にはアニメ化もされています。2025年1月10日からはアニメ第2期も放送されていました。2025年11月時点ではシリーズ累計発行部数4500万部を突破している大人気作品です。
本編未読でも物語を楽しめる?
小蘭視点で物語が進むので本編を読まなくても1編の物語として外伝を楽しむことができます。後宮の下働きの視点から見る後宮内の人間関係や仕事の厳しさなど新たな視点で楽しめると思います。もし、本編を読まれているのであれば、あの事件の裏ではこんなことが起きていたのかなど、本編の裏側や後宮の様子などがわかり面白いです。そして、猫猫と小蘭の関係をさらに深く知ることができます。『小蘭回想録』を読むことで一部の有能な人物だけで成り立っているのではない、後宮で働く少女たちがいるから後宮という場所が機能していることがよくわかる点も魅力です。他にも多くの読者から「本編ではあまり語られなかった小蘭の人生に焦点が当たっていて後宮という世界の厳しさがよりリアルに感じられた」「明るく無邪気な彼女の裏側にこんな繊細な感情があったのかと驚かされる」「小蘭の目を通して描かれる後宮は人間関係の温度や空気感が優しく伝わる」といった感想があります。読み進めるほどに小蘭というキャラクターがいとおしくなること間違いなしです。作品全体も穏やかな空気が流れているように感じられ読みやすいです。ただ一方で、大きな起伏が少ないため物足りなさを感じられるかもしれません。小蘭という少女の内面をじっくり味わいたい読者には刺さる作品です。
さいごに
『薬屋のひとりごと 外伝小蘭回想録』は本編のような派手さはあまりありません。どちらかというと主人公の少女の感情表現がゆっくり描かれている作品です。テンポの速い作品を求めている方にはあまり向かない作品かもしれません。ですが、心理描写などは細かく描かれ表情描写、空気感はとても丁寧に描かれています。感情にじわっときます。本編が好きな方はぜひこちらの外伝も読んでみてください。損はないはずです。


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